第1回 µ-知融合領域セミナーを開催しました
2026年6月18日、学術変革領域研究(A)「負ミュオン科学の新地平―物質・宇宙・人類をつなぐ知の融合(µ-知融合)」の第1回領域セミナーを、KEK東海1号館およびオンラインのハイブリッド形式で開催しました。セミナー後には、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)の見学会も行いました。
第1回の領域セミナーの講師には、日本原子力研究開発機構の山口雄司氏を迎え、「負ミュオン原子核捕獲による核種生成の計算とその検証」と題してご講演いただきました。

講演では、J-PARCの大強度ミュオンビームによる照射試料の放射化を予測する研究を出発点に、負ミュオン原子核捕獲による核種生成の計算と、J-PARC MUSEで行われた実験による検証結果が紹介されました。計算は多くの核種について実験結果を概ね再現する一方、中性子を多数放出する反応や荷電粒子放出、準安定核種の生成では大きな差が残り、「計算と実験が合わない理由」から物理モデルの課題を探る研究の過程が示されました。質疑応答では、重元素を用いた追加実験、実験データから原子核の状態を逆に推定する可能性、AIを活用した計算モデルの改良など、異なる専門分野から次々に質問や提案が寄せられました。
同じ物理現象を異なる分野の研究者が別の視点から見ることで、新しい問いが生まれる。負ミュオン原子核捕獲という一つのテーマから、核反応モデル、計算科学、AI、放射線安全、医療用RIへと議論が広がった、µ-知融合らしい第1回セミナーとなりました。

セミナー終了後、参加者はJ-PARC MLFの実験施設を見学しました。実際のビームラインや実験装置を前に、負ミュオンを利用した研究がどのような環境で進められているのかについて説明を受けました。

見学では、文化財の非破壊分析をはじめとする多様な研究への応用や、ミュオンを再加速して新たな実験へ利用する将来計画、施設内でのRI製造の可能性などが紹介されました。現場では、装置やビームラインを前に、それぞれの研究分野との接点について活発な意見交換が行われました。
セミナーで一つのテーマを学び、その後に実際の研究現場を見ることで、議論はさらに具体的なものとなりました。見学は単なる施設紹介にとどまらず、「この装置やビームを自分たちの研究にどう生かせるのか」を異分野の研究者がともに考える機会となりました。
µ-知融合では、今後も領域内外の研究者によるセミナーや研究会を開催していきます。異なる研究背景を持つ研究者が同じテーマを学び、同じ現場を見て議論することから、新たな「知の融合」につながる場をつくっていきます。
(文責:鷲山幸信)
