キックオフミーティング報告
2026年5月11日〜12日の2日間にわたり、学術変革領域研究(A)「負ミュオン科学の新地平(μ-知融合)」キックオフミーティングを、大阪大学核物理研究センター(RCNP)にて開催しました。
https://indico.rcnp.osaka-u.ac.jp/event/2851/
本領域「μ-知融合」は、2026年4月にスタートした新しい学術変革領域研究です。負ミュオン特有の「ミュオン原子生成」と「ミュオン捕獲反応」という物理現象を基盤として、基礎物理学、原子核・素粒子物理学、原子力工学、地球惑星科学、医療用核種開発、文化財科学など、多様な分野を横断的に結び付け、新しい学術領域「負ミュオン融合科学」の創成を目指しています。
今回のキックオフミーティングは、このような幅広い分野の研究者が一堂に会し、まずは互いの研究背景や問題意識を共有するとともに、「負ミュオン」という共通のキーワードを軸にどのような新しい学術展開が可能となるのかを議論することを目的として開催されました。
本ミーティングでは、領域代表者、領域補佐および各計画研究代表者による計11件の講演が行われました。プログラムは、素粒子・原子核物理、原子物理、量子エレクトロニクス、化学を中心とした基礎研究から、材料・デバイス研究、地球惑星科学、文化財科学、さらには医療応用まで、極めて多彩な内容で構成されており、本領域の特徴である「学際性」と「融合性」を象徴するものとなりました。
ミーティング冒頭では、RCNPセンター長の中野先生からご挨拶をいただきました。続いて領域代表の下村浩一郎教授(KEK)より、本領域の基本構想について紹介がありました。その中では、負ミュオンがもつ特有の物理現象を利用することで、従来の個別分野の研究だけでは到達できなかった新しい知見や技術を創出し、横断的・融合的な学術展開を推進することの重要性が強調されました。


また、世界には人工的にミュオンを生成できる大型施設が限られている中、日本にはJ-PARC MUSEとRCNP MuSICという世界有数のミュオン施設が存在しており、この二つを相補的に利用できることが、日本における負ミュオン研究の大きな強みであることも示されました。 具体的には、J-PARC MUSEが高強度ミュオンビームを活用した精密測定や応用研究に強みを持つ一方で、RCNP MuSICは柔軟なビーム利用や新規実験開発に適しており、両施設の特徴を生かした研究展開に対する期待が共有されました。
各講演では、それぞれの研究者がこれまで取り組んできた研究内容に加え、「なぜ負ミュオンなのか」「負ミュオンを用いることで、どのような新しい可能性が開けるのか」という観点から、自身の研究と負ミュオンとの接点について紹介しました。負ミュオンによる非破壊元素分析や核変換研究、物質中におけるミュオン挙動の基礎研究、医療用RI開発との接続、さらには文化財や惑星物質分析への応用など、多様な話題が提供され、参加者が互いの研究への理解を深める貴重な機会となりました。
2日間を通じて、現地・オンライン合わせて65名が参加し、会場では終始活発な意見交換が行われました。 特に休憩時間や懇親会では、分野を超えた交流が自然に生まれ、「これまで接点のなかった研究者同士が新しいアイデアを議論する」という、本領域ならではの活発な議論が各所で見られました。

本ミーティングは、あくまで「スタート地点」です。今後は、2026年夏に開催予定の領域全体会議に向けて、具体的な共同研究体制や研究戦略についてさらに議論を深めていく予定です。負ミュオンというユニークな粒子を軸に、自然科学のみならず工学・医学・人文学までを巻き込んだ新しい学術領域が、これからどのように発展していくのか、大きな期待が寄せられています。
最後に、本ミーティングの開催にあたりご尽力いただいた総括班領域補佐の友野氏(阪大RCNP/KEK物構研)、新倉氏(理研仁科センター)、ならびに運営を支えてくださったスタッフ・学生の皆様に心より感謝申し上げます。特に、会場運営やオンライン配信、参加者対応など、多岐にわたる準備とサポートにより、本ミーティングを円滑に開催することができました。また、ご講演・ご参加いただいた皆様にも厚く御礼申し上げます。
今後も「μ-知融合」では、研究活動やイベント情報を随時発信してまいります。引き続き、皆様のご支援・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
(文責・鷲山幸信)
