研究概要

電子の約200倍も重い素粒子である負ミュオンをウランのような重い原子核に打ち込むと、原子核は分裂します。この負ミュオンによる核分裂は、原子核物理の長い歴史の中で改めて注目を集めている現象で、私たちがよく知る通常の核分裂とは違うメカニズムがあると考えられていますが、その詳細はまだ分かっていません。

本計画研究では、日本が世界に誇るミュオンビーム施設を舞台に、独自開発の測定装置を駆使して、この現象を調べ上げます。核分裂の仕組みそのものを新たな視点で解き明かすことに加えて、核分裂で生成される寿命の短い不安定な原子核に負ミュオンを付着させることで、これまで実現が困難であった、不安定核の性質を精密に調べるための新しい実験手法の確立も目指します。宇宙で重い元素がどのように作られたのか、医療応用に向けた同位体はどう生み出せるのか。そうした大きな問いの根本につながる、基礎物理学の挑戦です。

私達の研究では、負ミュオンが引き起こす核分裂を実験・理論の両面から体系的に解明し、不安定核研究に新しい地平を切り拓くことを目的とします。具体的には、ミュオン捕獲核分裂およびミュオン触媒核分裂の2つの過程について、革新的な質量分析器MRTOF-MS(多重反射型飛行時間質量分析器)による核分裂片の精密質量分布測定と、中性子・γ線分光による分岐比測定を実施します。さらに、多次元ランジュバン模型をミュオン誘起反応へ拡張し、実験データを理論的に支える枠組みを構築します。これらを通じて、ミュオンという外部レプトン場が核分裂ダイナミクスに与える影響を明らかにするとともに、ミュオン触媒核分裂に伴う不安定核ミュオン原子の生成を実証し、将来の不安定核物理研究への新たなプローブの礎を築きます。

研究組織

研究代表者

  • 高峰 愛子(東京科学大学・教授):不安定物理・精密質量分光・総括
    https://at-lab.pages.dev

研究分担者

高峰 愛子
川瀬 頌一郎
川瀬 頌一郎
石塚 知香子
石塚 知香子
Patrick Strasser

研究協力者

和田 道治
庭瀬 暁隆
新倉 潤
新倉 潤
水野 るり惠
Giuseppe Lorusso