研究概要

電荷が負のミュオンという素粒子を使って原子を変換し、さまざまな種類のフランシウム(Fr)という重い元素を作り出すことで、電子やクォークという物質の最も基本的な粒子が持つ「電気双極子モーメント(EDM)」を詳しく調べます。EDMは、電荷分布の偏りであり、宇宙に物質が多く残った理由に関係すると考えられている「CP対称性の破れ」を理解するための重要な手がかりです。本研究では、複数のFr同位体を比較しながら測定することで、電弱相互作用や強い相互作用における対称性の破れの起源に迫ります。

これまで、EDMの測定に有望なフランシウムのような重元素は、加速器で作る際の条件が限られていたため、生成できる同位体の種類がごく一部に限られていました。本研究では、「ミュオン原子核捕獲反応」という手法を用いて、多様なFr同位体を効率よく生成します。さらに、それらをレーザーで冷却して捕捉する技術と組み合わせることで、世界に先駆けて、さまざまなFr同位体を用いた系統的なEDM測定技術の確立を目指します。

具体的には、低速ミュオンビームをラジウム標的に照射し、その中で生成されたFr同位体を取り出して、レーザー冷却に利用できる高性能なFr原子源を開発します。また、ミュオン反応によって生成されるアクチニウム(Ac)を利用して、長時間安定にFrを供給できる高強度・高純度の原子源も開発します。さらに、本研究では「量子エンタングルメント(量子もつれ)」という量子力学的な状態を利用した新しい量子センシング技術にも取り組みます。これは、原子同士に負の相関を持たせることで、従来の測定精度の限界を超える高感度測定を実現しようとするものです。

これらの技術を組み合わせることで、未知の素粒子や新しい物理法則の存在を探り、宇宙の根本的な仕組みの解明につなげることを目指します。

研究画像

研究組織

研究代表者

研究分担者

青木 貴稔
松田 恭幸
松田 恭幸
羽場 宏光
羽場 宏光
山崎 高幸
小高 康照
小高 康照

研究協力者

酒見 泰寛
長濱 弘季
小澤 直也
畠山 温
山中 長閑
柳瀬 宏太
百瀬 孝昌
Roberto Calabrese
Lorenz Willmann